はぎの通信 No.1(大志をもて!)
はぎの通信 No.1 (R4、12.13)
中越高等学校長 萩野 俊哉(はぎの・しゅんや)
大志をもて!(Be Ambitious!)
今年度(令和4年度)の中越高校のスローガンは、「攻める!越高」です。そして、その「攻める」という姿勢を作り出すのは次の3点だと思います。
Ambitious(アンビシャス:大志を胸に抱き、精神性を高くもつ!)
Aggressive(アグレッシブ:常に積極的に行動し、主体的かつ前向きに生きる!)
Able(エイブル:「やれば必ずできる!」と信じ、行動する!)
私は、このAで始まる3つのことばが好きです。ちなみに、英語アルファベットの最初の文字であるAには、「(品質が)最高級のもの」、「(成績が)優れている」という意味があります。また、英語アルファベットのAはまたAce(エース)とも読みます。Aceはご存知のとおりトランプなどの「1(の札)」のことですが、「(テニス、バレーボ
ールなどで相手が返球できない)素晴らしい打球、サービスエース」、「(ゴルフの)ホールインワン」、あるいは、「一流の人、達人」といった意味があります。
ここでは、この3つのA(エース)の内の最初に位置するAmbitious(大志)ということについて、ちょっと考えてみたいと思います。
Ambitiousという単語を聞くと、まず真っ先に思い浮かぶのが、アメリカ人クラーク博士の、“Boys, be ambitious!”という言葉ではないでしょうか。1877年(明治10年)、札幌農学校(北海道大学の前身)の教頭だったクラーク博士が、帰国に際して学生たちに述べた言葉として有名ですよね。この言葉は、一般的には「少年よ、大志を抱け(いだけ)!」と訳されるのが普通のようです。ただし、このambitiousという単語はなかなか曲者(くせもの)で、英和辞典を引くと「野心あふれる」とか「野望に燃えている」という訳語があてられているのが一般的です。したがって、先のクラーク博士の言葉は、「少年よ、野心をもて!」というふうに訳されて、何か若者たちの私的野心を鼓舞し、より大きな財産の獲得やより高い地位への出世を奨励するような言葉として受け取られることもあるのが事実です。
確かに、日本語にも「青雲の志(こころざし)」という言葉があって、それは「立身出世して、高位・高官の地位に到ろうとする功名心」(広辞苑)を意味しますが、その「青雲の志」を若者たちが持つことを奨励することが昔はよくありましたし、今でもときどき耳にします。
何が言いたいかというと、実はクラーク博士のこの“Boys, be ambitious!”という言葉は、この「青雲の志」をもてと若者たちに訴えているわけではないのです。この“Boys, be ambitious!”の後に続く、彼本人、クラーク博士の言葉をみなさんは御存じでしょうか。御紹介します。次のように続くのです。
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“Boys, be ambitious!” Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement、 not for that evanescent thing which men call fame … Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.
(青年よ、大志をもて。それは金銭や我欲のためにではなく、また人呼んで名声という空しいもののためであってはならない。......人間として当然そなえていなければならぬあらゆることを成しとげるために大志をもて。)
(岩波ジュニア新書『英語名言集』(加島祥造著)1993より)
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加島氏はわざわざ北海道大学に問い合わせて、上記のことを明らかにされたそうです。私はこの加島氏の著書に触れ、そしてこのことを知ったときに、とてもうれしくなりました。「ああ、これだ!」と思いました。さすがはクラーク博士だと思いました。
越高生の皆さんにもこのクラーク博士の遺(のこ)した真の言葉の意味を味わってもらいたいと思います。そして、この「人間として当然そなえていなければならぬあらゆることを成しとげるために大志をもて(Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.)。」という、そこにこそ、私たちの目指す目標の根幹があるということを知ってもらいたいと思うのです。
以上