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2023.03.02 校長ブログ

はぎの通信 No.8(卒業証書授与式 式辞)

 

はぎの通信 No.8 (R5. 3.2)

 

中越高等学校長 萩野 俊哉(はぎの・しゅんや)

 

75回(令和4年度)中越学園中越高等学校卒業証書授与式

校長 式辞(Graduation Ceremony Address

 

  卒業式、無事終わりました。厳粛な中にも、思いのこもった、心に沁みる素晴らしい式でした。その後の卒業生による「卒業合唱」も素晴らしかった。心にじーんときました。関係するすべての皆様に、改めて深く感謝申し上げます。大変ありがとうございました。

 

 今日のブログでは、その卒業式での私の式辞を文字にして紹介します。よろしければお読みください。

 

式 辞

 

 いまだ続く新型コロナ禍の中、昨年より幾度かの大雪に見舞われ、厳しい冬となりました。そのような中でも、雪国新潟の寒い冬はそろそろ終わりを迎え、ここ長岡の町にも少しずつ春の息吹が感じられるこの佳き日に、卒業証書授与式を挙行できますことは、私たち教職員にとりましても、この上ない喜びであります。ご多用中ご臨席賜りました、学校法人中越学園理事長・村山光博(むらやま・みつひろ)様に、まずもって深く感謝申し上げます。また、誰よりも卒業を心待ちにしておられた保護者の皆様やご家族の皆様に心よりお祝い申し上げますとともに、本校へのご支援とご協力に改めて厚く御礼申し上げます。

 さて、先ほど卒業証書を授与いたしました二百六十名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。いろいろな思い出を胸に本校からの「巣立ち」を迎えた卒業生の皆さんの未来に幸あれと心より願っています。

 在学中、皆さんがたくさんの喜びと楽しみを味わいながら、また同時にさまざまな困難を乗り越えて卒業にたどり着いたことは、皆さんの生涯のかけがえのない財産であり、また、手にした証書は努力の証であります。卒業という目標を達成した誇りと自信を胸に刻み、また同時に日夜を問わず、温かい愛情をもって励まし支えてこられました保護者・ご家族や先生方、さらには地域の方々を含め、日頃より物心共に熱いご支援や励ましをいただいております同窓会や後援会を始めとする多くの方々にも思いをいたし、感謝の気持ちを忘れることなく、一層の精進を積み重ねるよう期待してやみません。

 さて、今私は「支援」や「励まし」という言葉を使いました。皆さんは今まで本気で人を励ましたり、応援したことがありますか。

 思えば、教師はとても「わかりやすい」形で人を、すなわち生徒を、応援する職業だと思います。教師は常に生徒の成長を応援しています。ちょっと極端な例ですが、私の経験をお話しします。教員になって数年後、まだ二十歳代半ばの頃ですが、いわゆる持ち上がりで高校三年生のクラス担任になりました。そのクラスに、一年生の時から私のクラスにいたある女子生徒がいました。彼女はいろいろと複雑な事情もあり、二年生の終わり頃からあまり学校に来なくなりました。朝自宅に電話をして、起こしてあげて学校に来るよう励ましてやると、それでも何とか学校に来てそれなりに授業を受けてふつうに帰っていくという日々がありました。三年生への進級前、何回目かの家庭訪問をして保護者の方も交えながら話を聞き、相談をしました。結論は、卒業はしたい、そして卒業させたい、ということで一致しました。ところが、先ほど言ったように、彼女は私が朝電話で起こしてあげないと学校には来ません。「それでは」ということで、それから私はほぼ一年間、朝起きるとすぐに私の自宅から彼女へ電話をして、「おはよう!起きたかい?気を付けて学校に来るんだよ。待ってるよ」と声をかけ続けました。ほぼ一年間。学校のある日は毎日この「モーニングコール」をし続けました。当時私は結婚したばかりでしたが、さすがに妻もあきれ果て、「なんであなたがそこまでしなくちゃいけないの?」と責められたりもしました。しかし、当時の私は、何とかその生徒を卒業させてやりたい、という一心の思いでした。我ながらよく続いたと思います。そして、一年後。生徒は無事に卒業していきました。卒業式後、各クラスのホームルームでクラス担任から生徒一人一人に卒業証書が手渡されます。私は彼女に卒業証書を手渡すとき、感極まってしまい、思わず涙がこぼれ出ました。卒業後、その生徒とは連絡が取れなくなりました。そして、未だに何の便りもありません。

 私の「モーニングコール」は私から生徒への日々の「応援エール」でした。それが、その生徒に伝わったかどうか、それはわかりません。結局伝わらなかったのかもしれません。でも、当時の私はそのときにはそのような形で「応援」するより他なかったのです。反省することは少なからずあったかもしれませんが、後悔はしていません。

 人はひとりでは生きていけません。どうか本気で人を応援できる人になってください。そして、素直に人から応援される人になってください。

 さて、保護者の皆様。今ここにいるお子様たち、卒業生の皆さんは、本校入学以来二年間という長きにわたって新型コロナウィルスの影響で、ほぼすべての学校行事の中止や変更を余儀なくされてきました。三年生になって、ようやくほぼ正常の学校行事を行えるようになり、先輩たちの指導を受ける機会のないままに、自分たちの力で各行事において主導的な役割を果たしてきました。その姿勢、その気概、その覚悟、まことに立派でした。大いに褒めていただきたいと存じます。

 このような状況の中、ご家族の皆様には少なからずさまざまなご心配やご苦労があったかと思いますが、こうして卒業の日を迎えた姿に感慨もひとしおのことと存じます。誠におめでとうございます。これから卒業生の進む道には、大小様々な厳しい試練が待ち受けていると思います。そんな試練に果敢に立ち向かうとき、子どもや家族の幸せを願う心は、大きな励ましとなるに違いありません。卒業したとはいえ、社会的にはまだまだ経験が足りません。人生の先輩として子どもたちを温かく見守ってください。

 結びに、卒業生の皆さん、いよいよ本校を巣立つときが来ました。明るく、進取の精神、「若き今日 眉上げん」。本校校歌の第一番の歌詞の一節です。さあ、眉上げん! 今こそ顔を上げ、大空を見上げて、大きな希望を持って前に進みましょう。社会は必ず皆さんの活躍を必要としています。どうか皆さん、健康に十分留意され、この我らの学び舎、我らの中越高等学校で身につけた精神で、たゆまぬ前進を続けてください。それでは、希望に満ちた旅立ちの日に当たり、この学び舎を巣立ちゆく皆さんの前途に幸多からんことを心から祈念して式辞といたします。

   令和五年三月二日

    学校法人中越学園

中越高等学校長 

                      萩野 俊哉