はぎの通信 No.16(入学式 式辞)
はぎの通信 No.16 (R5. 4.7)
中越高等学校長 萩野 俊哉(はぎの・しゅんや)
令和5年度 中越学園中越高等学校入学式
校長 式辞(Entrance Ceremony Address)
昨日(4月6日)、349名の新入生を迎えての入学式を無事終えました。お陰様で、定員を超える1クラス増という形で多くの新入生を迎えることができました。皆、少し緊張の面持ちながら、立派に式に臨んでくれました。新入生の皆さん、中越高校へようこそ!心から歓迎いたします!
今日のブログでは、その入学式での私の式辞を文字にして紹介します。よろしければお読みください。
式 辞
新型コロナウイルス感染症への対応にさまざまな変化の兆しがある中、本校では予定通り本日ここに、御来賓として、学校法人中越学園理事長の村山光博(むらやま・みつひろ)様を始めとして、同窓会長・波形正広(なみがた・まさひろ)様、PTA会長・佐藤敦(さとう・あつし)様、そして、PTA副会長・竹樋直也(たけひ・なおや)様各位の御臨席を頂き、令和五年度、学校法人中越学園中越高等学校入学式を挙行できますことは、私達教職員にとりましても大きな喜びであり、ご参席いただきました御来賓の皆様並びに保護者の皆様に対しまして心から御礼を申し上げます。
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。皆さんの入学を心より歓迎いたします。
さて、本校は、今年創立百十八年目を迎える歴史と伝統ある学校です。卒業生も三万人をゆうに超え、諸先輩方は各界においてその中枢及びリーダーとして活躍しておられます。本校の創立は明治三十八年(1905年)、当時小学校の校長であった齋藤由松(さいとう・よしまつ)先生が、生徒の女子師範学校への入学の困難さを見て、「自己の信ずる教育をするためには、自分の学校を持たねばならぬ」と、三十六歳にして校長を退職し、自ら「齋藤女学館」を設立しました。当初は、女子師範学校および高等女学校への入学希望者、さらに小学校教員検定受験者の予備教育を行う学校でした。本校の建学の精神は、この未来の子供たちを教育する地域のリーダーたる女性の先生の育成でありました。今現在では、私たちはこの建学の精神に基づいてさらにそれを広げ、高い志と夢を持って世界で活躍する人材・リーダーの育成を本校の教育の根本方針としております。
現在の中越高等学校は、さらに次の三つのことを学校の教育理念として掲げています。一つ目は校訓です。その学校の教育の「背骨」となるものです。その本校の校訓は「質実剛健」。かざりけがなく、まじめで、強く、しっかりしていることです。二つ目は本校の校風、その学校の特徴を表すスクールカラーです。それは、「進取の精神」。過去にこだわらず、自ら意欲的に新しいことにチャレンジすることです。校風にはもう一つあって、それは「文武一如」(ぶんぶいちにょ)。文も武も根源においては一つである、具体的には学業と部活動、どちらも等しく大切にするということです。そして、最後の三つ目は本校の教育精神です。それは、まさに今このステージの頭上に掲げられている言葉「明るく 進取の精神、『若き今日 眉上げん』」です。この「眉上げん」は、本校の校歌の第一番の歌詞の一節(いっせつ)で、「顔を上げ、大空を見上げて、大きな希望を持って前に進もう」という意味です。
今日は入学式。この中越高等学校の生徒として第一歩を踏み出す日です。その最初のスタートにあたり、本校の生徒として成長していく上で、ぜひ胸に刻んでおいていただきたいこととしてお話しいたしました。
さて、今、私は「成長」と申し上げましたが、人に成長をもたらすものは何だと思いますか。その一つとしてあるのは、私は「知的好奇心」であると思います。これから少しこの知的好奇心ということについてお話しします。皆さんは、次に述べる考え方に賛成でしょうか、反対でしょうか。
「人間は結局のところ、衣食住を確保するために働くに過ぎない。周囲のいろいろな出来事に関心や興味を持つのも、身を守るために必要だからである。できるだけ楽をしたい、これこそ誰もが心の中では強く望んでいることなのだ。」…
おそらくこの考え方に対する反応は、皆さんの人間に対する見方に基づいていると言ってよいと思います。賛成する人は、「人間とは元来怠け者であり、自分が困ったことにならない限り、自発的に何かをしようとはしない」と考えています。一方、反対する人は、「人間は本来活動的であり、自分の能力を発揮するために進んで働く」という人間観を持っています。さて、皆さんはどのように考えますか。
「できるだけ楽をしたい」と言う気持ちは誰にでもあります。一日中ゴロゴロして、何もしないで暮らしたいと考える。そして、例えば、こんな仕事があればいいと思うことでしょう。一日一万円くらいの賃金をもらって、ベッドの上で何もしないで一日中寝ていて良い、食事は三食とも十分に与えられる。こんなことを言われればすぐに飛びつく人も多いに違いありません。実際、ある人がこのことを大学生を使って実験したところ、「なんと割のいいアルバイトだろう」と自ら志願した者たちばかりであったにもかかわらず、長い人で一週間、ほとんどの人が2、3日しかこの生活に耐えられなかったといいます。このことは、一日中何もすることがなく、ただ寝転がっているだけの状態は決して安楽ではなく、むしろ苦痛であるということを意味しています。つまり、「人間は元来安楽だけを求める怠け者である」と言う考え方は間違いであることがわかります。
そもそも赤ん坊は損得に関わりなく、何にでも興味を示します。言葉ができるようになると、「これなあに?」を連発し、それがわかってくるようになると「なぜ?」とばかり聞きます。誰もが、赤ん坊や幼児の時には、好奇心の固まりだったのです。しかし、それがいつのまにかなくなっていき、「怠け者」になってしまうのはなぜでしょうか。それは、「学ぶ」ことをあまりにも「将来の生活のため」とか「大人になって困らないため」という、必要性や利害に結び付けて考えすぎるからではないでしょうか。それが、本来興味をもてる可能性のある対象をイヤイヤながらする気持ちを生み、人を無気力にしてしまうのだと思います。
未知のものへの好奇心は、本能として誰の中にもあります。その本能の中にある「学び」の欲望を眠らせておくのは、何とももったいない話です。知的好奇心を呼び覚ませることができれば、学ぶことは苦痛ではなくなり、どんどん吸収できるようになるでしょう。縁あってこの伝統ある中越高校に入学してきた皆さん。せっかくのチャンスです。ここで改めて皆さんの持つ知的好奇心を自ら奮い立たせ、将来立派に卒業していっていただきたいと切に望みます。
結びに、保護者・ご家族の皆様に申し上げます。本日はお子様のご入学誠におめでとうございます。高等学校は人生の方向を決定する大事な時期であり、悩み苦しみも大きい時期でもあります。私達教職員は、お子様が自らの生きる道を自らが切り開いていけるよう全力を尽くして参りますが、生徒の成長は学校教育のみで図れるものではありません。まず、ご家庭での基本的生活習慣が確立され、そして、家庭・学校との相互の理解・信頼があってこそ達成されるものであります。連携を密にして取り組んでいくことが重要と思います。どうぞ、学校の方針をご理解いただき、格別のご支援とご協力を賜りたいと存じます。新入生の皆さんが、本校での生活で自らを磨き、輝き、大きく成長することを心から祈念して、式辞といたします。
令和五年四月六日
学校法人中越学園
中越高等学校長
萩 野 俊 哉