はぎの通信 No.80(「ありがとう」の反対は?)
はぎの通信 No. 80 (R6. 6.17)
中越高等学校長 萩野 俊哉(はぎの・しゅんや)
「ありがとう」の反対は?(What is the opposite of "thank you"?)
「明るい」の反対は「暗い」。「長い」の反対は「短い」。「好き」の反対は「嫌い」。それでは、「ありがとう」の反対は何でしょうか。
... それは「当り前」です。人から何かをしてもらって、それを当たり前と思うのであれば、感謝の気持ちを表す「ありがとう」という言葉は出ません。しかし、それを当たり前と思わなければ、感謝の気持ちがわき上がり、自然と「ありがとう」という言葉が出ます。
運動部や文化部のさまざまな大会やコンクールなどに出場して、皆さんはそこで大いに活躍をして来てくれます。素晴らしいと思います。しかし、どうか忘れないでいただきたい。その大会を大会としてきちんと運営し、実施する、たとえば、グラウンドやフィールドやコートを皆さんが存分に実力を発揮できるように整備してくださる人たち、会場を見事にセッティングしてくださる人たち、タイムスケジュールを睨みながら、大会の進行を公正・着実に進めてくださる人たち、皆さんのケガや病気に備えて、準備・対応してくださる人たち ... さまざまな人たちがまさに力を併せて、皆さんの「舞台」を整えてくれています。それを「当り前」と捉えますか。
部活動や勉強などに一生懸命に取り組めば取り組むほど、ある意味、「自己中心的」になりがちです。「勝てばいい」「優勝すればいい」「良い点数をとればいい」「合格さえすればいい」... それだけが自分の心のすべてを占めてしまいます。勝つことにいい意味で貪欲なのは、私はそれはそれで大事なことだと思います。部活動にせよ、勉強にせよ、努力を重ねながら自分自身との戦いに勝ち、壁を乗り越えていく、それは大事な経験であり、それが人を大きく成長させます。しかし、どうか、ある物事に対してそれを「当り前」と捉えていいのかどうか、ちょっと考えてみる心の余裕というか思いやりの心を持っていただきたい。そう思います。
以上